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International Photography Awards 2024 (IPA2024)とは何か?

  • 執筆者の写真: kiyoshikarimizu
    kiyoshikarimizu
  • 5月4日
  • 読了時間: 4分

更新日:5月5日

写真界のアカデミー賞とも呼ばれるルーシー賞を主宰するルーシー財団が主催するニューヨーク発の世界最大級国際コンテストです。新進気鋭の才能を発掘・育成し、世界へ向けて紹介していくことを目的としています。2024年の表彰式は、ギャラリーのあるギリシャアテネで行われました。IPA関連団体として、TIFA、PX3、BIFA、MIFAというものがあります。この中でも日本では、東京の冠の付くTIFA(Tokyo International Foto Awards)が有名ですかね。


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IPA2024授賞式
IPA2024授賞式

海外と日本のフォトコンテストの違い

IPAの審査の特徴を説明するために、まず前提条件として、日本のフォトコンテストと海外のフォトコンテストの違いを理解していなければ、話が進みません。


私も授賞式参加のため現地に行って、よりそれを実感したのですが、日本のフォトコンテストでは、写真そのものの技術的な完成度や美しさが重視される傾向があります。審査員には現役のフォトグラファーが多く、応募作品は主に同業者の目で評価されます。批評家枠でいうと飯沢幸太郎さんぐらいしか無知な私は知りません。このため、技術的な巧みさや決定的瞬間、自然美、作風の斬新さなど視覚的表現として高く評価される一方で、作品が持つメッセージ性やコンセプトについての議論はそれほど深く掘り下げられないことが少なくありません。


写真新世紀が終わり、SNSを中心に影響力を増した東京カメラ部などの影響によりその傾向が顕著になったように思います。


一方、海外、特にIPAのような国際的なフォトコンテストでは、作品が持つ「アートとしての価値」が問われます。審査員は美術館の学芸員やギャラリスト、大学教授、写真専門誌の編集者など、写真を批評する立場にある専門家で構成されています。彼らは、写真を単なる技術や美的表現として見るだけでなく、社会的・文化的な文脈の中でその意義を評価します。もちろん歴史に残るような突き抜けた技巧や美しさがコンセプチュアルなものを超えてしまうことは多々ありますがそれは例外として今回は除外。


IPA審査員一覧 



2024年ゲストキュレーター
2024年ゲストキュレーター

こうした審査の特徴は、応募者に対しても異なる姿勢を求めます。技術的に優れた作品であるだけではなく、独自の視点や深い思考、さらには時代性や社会との対話を感じさせるコンセプトが重視されるのです。その結果、作品の評価は単なる美しさや技巧の域を超え、どれだけ強いメッセージや感情を観る者に伝えることができるかという点にまで及びます。


芸大や美大を卒業された方であれば逆にこれが本流なので、何の違和感もないと思うのですがSNSから写真に入った人は、適応するのに時間がかかると思います。


このように、日本と海外のフォトコンテストには、応募者が考慮すべき基準や視点に大きな違いがあるため、それを理解した上で応募することが求められます。


コンテストのために自分の作風やコンセプトを変えたくないという方がいらっしゃいますが、そもそもアート先進国の欧米で戦うには、そのプラットフォームに適応しないと戦う機会すら得られないのが現状です。

現代美術家の村上隆さんは、「世界で認められるためには、その市場や文化のルールを理解し、適応することが必要だ」といった趣旨の発言をされています。これはフォトコンテストの世界にもそのまま当てはまります。作品がどれだけ自分の中で完成されていても、それが審査員や市場の文脈に合わなければ評価の対象外になってしまうことは多々あります。


村上隆 芸術起業論
村上隆 芸術起業論

アートや写真において「適応する」ということは、決して自分のスタイルやコンセプトを捨てることを意味しません。それはむしろ、自分の作品が持つ独自性やメッセージを、国際的な視点や文脈の中でどう伝えるかを考えるプロセスで、この適応の過程は、自分自身の作品をより深く理解し、さらに進化させる機会でもあるのです。

例えば、欧米のフォトコンテストでは、作品が持つ社会性や哲学的な問いが高く評価されます。そのため、自分の作風やテーマがそれらの基準とどう結びつけられるのかを再考し、言語化する能力が求められます。これを通じて、作品の中に込められたアイデアがより強く、より普遍的に響くようになるのです。

そのため欧米の写真の世界で戦うためには、「自分の中での完成(視覚的表現での完結)」を超えた「他者との対話(コンテクストによる背景と文脈)」が必要になるわけです。

 
 
 

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